
トヨタで思い浮かぶイメージと言えば何がありますか?
もし、このように聞かれると私は、トヨタと言えば自動車を真っ先に思い浮かべてしまいます。
その世界企業であるトヨタが、新開発をしたのは自動車ではなく、なんと車の燃料電池を応用した電車を開発すると発表しました。
これには本当に驚きました。
今回の記事では、トヨタがJR東日本と日立製作所と連携して新開発する燃料電池車両について解説します。
トヨタが新開発する電車は「ひばり」

自動車開発で最前線に立つTOYOTA(トヨタ)ですが、一体どのような電車を開発するのでしょうか。
トヨタでは、水素を燃料とした「燃料電池」と「蓄電池」を電源とするハイブリッドシステムが開発されていて、その燃料電池を既に自動車で運用しています。
有名なのは燃料電池自動車の「MIRAI」や、燃料電池バスの「SORA」があります。
この自動車開発で培った燃料電池技術を応用し、ハイブリッドシステムを搭載する試験車両が「FV-E991系」になります。
FV-E991系とは?

FV-E991を簡単に説明すると、環境に優しくなった新型電車の試験車両になります。
愛称は「HYBARY(ひばり)」と命名されています。
これは、「HYdrogen-HYBrid Advanced Rail vehicle for Innovation(変革を起こす水素燃料電池と主回路用蓄電池ハイブリッドの先進鉄道車両)」の頭文字を取っています。
HYBARIの「HY」は水素であり、「HYB」がハイブリッドになりますので、この2つの意味を強く込めた愛称となっております。
鉄道好きな方は、「ひばり」と聞くと特急電車ひばり号を思い出してしまいますね。
最新技術なのに、なんだかとても懐かしい気持ちになってしまう不思議な感覚ですね。
FV-E991系の性能
このFV-E991では、これまでの車両と違い燃料電池で鉄道を動かすという目的があります。
車両性能は以下の通りです。
- 2両1編成
- 航続距離は最大約140km
- 最高速度100km/h
燃料電池装置とは?
主回路用蓄電池とは?
燃料電池電車の動く仕組み

ハイブリッド技術を応用し、燃料電池装置と主要回路蓄電池の両方からモーターへ電力を供給して、電車を動かす仕組みです。
トヨタの燃料電池の動き
日立のハイブリッド駆動システムの動き
トヨタの燃料電池装置がエネルギーを発電させ、日立のシステムが車輪を動かすコントロールを行います。
大企業3社が共同開発
この環境に優しい新型車両の「ひばり」は、最新技術を開発する大手3企業が共同開発しています。
- 燃料電池自動車のノウハウを持っているトヨタ自動車
- 鉄道技術は世界トップクラスのJR東日本
- システム開発にも強い日立製作所
どの企業も知らない人はいない有名な会社ですね。
それぞれの得意分野で開発が担当されております。
- トヨタ:燃料電池装置の開発
- 日立製作所:主要回路蓄電池とハイブリッド駆動システムの開発
- JR東日本:燃料電池電車の運用全般
燃料電池とは?

そもそも燃料電池とは何なのか?
燃料電池とは、水の電気分解を利用して「酸素」と「水素」を化学反応させて、直接電気を作り出す装置です。
通常の電気を作り出す方法は、石炭や石油といった資源を燃やす事で水を沸騰させて、その蒸気を利用して発電機(タービン)を回転させることで電気エネルギーを取り出します。
これが、日本の8割以上の電気を作っている「火力発電」になります。
火力発電のエネルギー
【化学エネルギー】→【熱エネルギー】→【運動エネルギー】→【電気エネルギー】と変化していきます。
他にも、水力発電・原子力発電・核融合発電・風力発電・太陽光発電など様々ありますが、今回は割愛します。
その一方で、燃料電池は【化学エネルギー】→【電気エネルギー】となり、燃料である水素と酸素から直接電気を作ることが可能なのです。
燃料電池の特徴
燃料電池の主な特徴は4つあります。
メリット・デメリット様々ありますが、これからの社会に燃料電池は必要なエネルギーになってきます。
自動車や電車以外にも様々なシーンで活用できるエネルギー技術なので、その特徴を知っておきましょう。
排出ガスがクリーン
燃料電池から排出するガスには、環境汚染物質がほとんどない為、環境に優しくて騒音や振動も少なくなっています。
自動車に限らず、建物屋内だったり市街地での運用も期待が出来ます。
電池寿命が短い
まだまだ信頼性やコスト面などで課題が山積みですが、その中でも電池寿命は特に改善して欲しい点です。
2019年頃まで自動車の利用を酷使した状態だと、15年で15%劣化すると言われておりました。
しかし、最近では水素燃料電池の寿命を延長する新技術が開発されて、約4倍も延びました。
今後は、さらに進化が進むと思われますので時間と、世間の認知度・普及で大きく変わるでしょう。
二酸化炭素(CO2)を除去
水素を取り出す工程で、天然ガス・メタノールなどの燃料が使用されるため、水素製造時に二酸化炭素が排出されます。
二酸化炭素(CO2)の危険性
無駄のないエネルギー効率でコスト削減
冷暖房や給湯器などの発電時に発生する熱も回収して、お湯を作り利用するのでエネルギーロスが少なくなって、ガス消費量の削減や少ないエネルギーで床暖房が使用出来たりと、発電効率の高い運用が出来ます。
家庭用燃料電池としては、パナソニックのエネファームが有名ですね。
トヨタが電車開発に参入する理由

トヨタは燃料電池関連の特許実施権を2015年無償で提供しています。
今回はトヨタが、JR東日本に協力・応援する形で共同開発となっていますが、トヨタにもメリットがあるのです。
それは、トヨタがやたらと水素エネルギーを利用する自動車にこだわる理由にも繋がっています。
無償技術提供で、トヨタにも恩恵がある理由を説明致します。
トヨタが燃料電池電車に参入するメリット

ずばり、水素エネルギーに対する意識改革や、インフラ設備の普及等です。
トヨタは、水素エネルギー会社に鉄道業界が参加してくれると心強いと考えております。
燃料電池の自動車は、まだまだ普及されていないのが現状です。
水素ステーションも少ない状況で、認知さえされていない事がほとんどです。
しかし、燃料電池電車が実用化してくれれば水素エネルギーの需要は高まり、技術の進化やコスト削減も実現していくでしょう。
そして、燃料電池電車の車両基地になる場所では、水素の充填設備も必要となるでしょうから、そういった所に水素ステーションが出来れば、同様のエネルギーを持つ燃料電池自動車の充填場所の出来上がりですね。
トヨタのメリットを要約しましょう。
- 水素ステーションがたくさん出来る
- 燃料電池自動車が普及する
- コスト低下が図れる
と言ったところでしょうか。
トヨタ1社で水素ステーションを増設していくよりも、2社が協力して増やした方が負担も少なく、認知度も上がるはずですね。
水素ステーションが増えるとどうなる?
水素ステーションが沢山増えて、いつでもどんな時だって水素が充填出来るようになれば、これまで問題だった長距離移動の心配もなくなります。
今までは、少し遠出するような時には水素の補給場所がなくて燃料切れを起こしたらどうしよう。という不安がありました。
そういった移動手段として致命的なデメリットを解消出来るのは大きなメリットです。
そのように大衆に認知されると、環境意識も相乗効果となり、結果的に燃料電池自動車の普及につながるのです。
燃料電池電車のまとめ

それでは、トヨタが開発した燃料電池を利用した最新型電車についておさらいしましょう。
FV-E991系は、燃料電池装置はトヨタが開発・供給をして、電力変換装置と主回路用蓄電池は実績もある日立が担当します。
それぞれの専門性を活かした2両1編成の車両となっており2022年に試験走行が開始されます。
最高速度は100km/hで、約140kmを走行可能です。
ちなみにJRの電車は営業最高速度130km/hです。
あくまで最高速度なのでそこまでスピードを出すことは少ないですが。
最後に燃料電池電車のメリットをおさらい
- 環境汚染問題に配慮
- 停電時にも電車を動かせる
- 水素ステーションの増設
とはいえ、コスト面や燃料電池の経年劣化などのデメリットも存在します。
私たち一般市民からすると、娯楽の移動だけでなく仕事などの移動にも利用する頻度が高いので安全面だけはしっかりとしていて欲しいですね。
最後までご覧頂き誠にありがとうございました。